木の実は森に住む生き物たちの大切な食べ物でもあります。
見つけた木の実はすべてひろわずに、
ひとつひろったら、
つぎのひとつは、森の生き物たちのために、
つぎのひとつは、新しい木になるために、
つぎのひとつは、木の実ひろいを楽しみにしている別のこどものために、
残しておきましょう。
マテバシイは日本固有の植物で、本来は九州南部などの暖かい地方の木ですが、街中の公園や街路樹によく利用されます。正面入口広場の「レストランさんかくぼうし」の裏の斜面にまとまってある他、ローラーすべり台の脇にも小さめの木があります。9月中旬~10月にたくさんのドングリを実らせます。
マテバシイのドングリは熟すまで2年かかり、殻も硬くしっかりした大きめのドングリを落とします。殻斗(※)は魚のうろこ状の模様をしています。葉は厚めでツヤがあり冬でも散らず一年中緑です。中身は渋みがなく生でも食べられますが、フライパンで炒ると、クリみたいな味がして意外とおいしいです。中身をくだいてドングリクッキーなどにも利用できます。
※殻斗:ドングリについていて「ぼうし」「はかま」などと呼ばれることもあるお椀状のもの。
コナラは雑木林の代表的な樹木のひとつです。冬には葉を落とす落葉広葉樹で、外周道路沿いで見られます。雑木林はもともとあった自然そのままの森ではなく、昔の人が生活に必要な火を燃やすための薪を得るために手を入れた森です。今では電気やガスがあるので木を切って薪にすることはなくなりましたが、その名残が現在のこどもの国の雑木林です。
コナラのドングリは細長く、ドングリと言われたら大体の人が思い浮かべる代表的なドングリの形をしています。葉は横幅が広く縁がギザギザしています。木肌は縦に溝があります。殻斗は魚のうろこ状の模様をしています。たくさん実る年と全然実らない年があり、その差が大きいです。9月下旬~10月にドングリを落とします。
クヌギはコナラと同じく雑木林の代表的な樹木のひとつです。冬には葉を落とす落葉広葉樹で、外周道路沿いで見られます。
クヌギのドングリは大きく丸く、殻斗はもじゃもじゃで、こどもに特に人気です。2年かけて大きく育ちます。葉は細長く縁にはギザギザがあります。木肌は縦に溝があってコナラと良く似ていますが、コナラの木肌よりも黒っぽく多く溝が入ります。9月下旬~10月にドングリを落とします。
同じ種類のドングリでも、ものによって大きさがまちまちです。
コナラとクヌギはとても良く似ていますが、慣れると木肌で見分けられるようになり、覚えておくと便利です。夏の間カブトムシが集まる樹液を出す木はこのコナラやクヌギです。ただし樹液には日中はスズメバチがいるので、見つけても近づかないようにしましょう。
こどもの国(神奈川県横浜市)のある場所は照葉樹林帯に含まれ、人の手が入らない本来の自然のままならば一年中葉を落とさない木々が中心の森になるのですが、その森の代表的な木のひとつがシラカシです。公園の木や街路樹としてもよく利用され、現在こどもの国で見られるものはほとんどが後から植えられたものです。外周道路やローラーすべり台周辺にあります。
シラカシのドングリはちょっと見たところコナラのドングリに似ていますが、殻斗が縞模様でコナラと全然違うので区別がつきます。葉はやや厚めでしっかりしています。ドングリが熟すのは遅めで10月中旬~11月です。
ドングリマップ(PDF版)のプリントはビジターセンターでも配布しています(無料)。園内でドングリ探しを楽しむ際にご利用ください。
雑木林の中心的な木であるコナラやクヌギは冬の間葉を落とします。寒い冬が終わり、春が来て満開の桜が散り始めるころ、雑木林の木々は新しい葉を出しはじめます。
葉を出すと同時にコナラの木は花を咲かせます。花は雄花(写真左)と雌花(写真右)があります。雄花は花粉を風に乗せて飛ばします。このような花を風媒花といいます。杉などが風に乗せて花粉を飛ばすことによって花粉症の原因になりますが、体質によってはコナラの花粉も花粉症の原因になります。
夏、だんだん成長してドングリっぽくなってきました。
8月後半、外周道路を歩いていると、まだ緑のドングリが葉っぱごと地面にたくさん落ちています。せっかく成長していたのに一体どうしたのでしょう?
落ちているものをよく見てみると、枝の切り口がハサミで切ったようにまっすぐです(写真左)。ドングリの殻斗の部分には、何かを刺したようなあとが残っています(写真右)。 ドングリを落としているのはハイイロチョッキリという1センチに満たない小さな昆虫(ゾウムシの仲間)です。
ハイイロチョッキリは長い口の先をドングリに突き立て、体を左右に揺すりながら穴を開けていきます(写真左)。長い口がすっかり見えなくなるまで穴を開けると、自分のお尻を穴の上に持ってきて産卵します。もう一度口を穴に入れて塞ぎ、今度は枝に口の先を押し当て、左右に体を揺すりながら切り落とします。
ハイイロチョッキリを見つけるのはちょっと大変です。ひとつの方法として、ビーティングという採集方法があります。1、2メートルの棒と傘を用意します。ハイイロチョッキリがいそうな木の枝の下に、開いた傘を逆さまにして設置します。棒で木の枝を叩きます。驚いたハイイロチョッキリが得意の「死んだふり」でコロンと傘の中に転がり落ちます。あとは傘をのぞきこんでハイイロチョッキリを探すだけです。ちなみに棒で叩く時、落ちてくるのはハイイロチョッキリだけとは限りません。イモムシやクモやその他の昆虫も一緒に落ちてきますので、この方法を試す際には十分な準備と心構えをしてください。ハチの巣などにも注意です。
ハイイロチョッキリのオス(写真右)は胸の両脇にトゲ状の突起がありますが、メスには無く、見分けがつきます。
ドングリの中に産み付けられた卵(写真左)は、孵化して幼虫になりトングリの中身を食べながら成長します(写真右)。成長した幼虫はドングリから出て土の中に潜り、蛹になります。
秋、熟したドングリが地面にたくさん落ちています。コナラやクヌギは豊作の年と不作の年の差が大きく、全然ドングリが実らない年もあります。
コナラのドングリは乾燥に弱いので、落ちた後すぐに根を地面に伸ばしそのまま冬を過すごします。冬を過ごす間に外側の殻が割れてとれてしまうものもあります。ドングリの中身は子葉(双葉)でここにたくさん栄養が蓄えられています。赤くなる子葉もあり、園内を散策していると目につきます。強い日差しから芽を守るために赤くなるという説がありますが、本当のところはよくわかりません。
春、桜の咲く頃、芽が伸びて本葉が広がりはじめます。
新緑がまぶしい季節になると、雑木林の地面にはたくさんのコナラの実生(ドングリから芽を出したもの)が見られます。ですがほとんどの実生は大きく成長してドングリを実らせることなく一生を終えてしまいます。